当社のコラムですでに色々とお伝えしている建物の定期的な「大規模修繕」ですが、1回目の大規模修繕と2回目以降の大規模修繕では、その内容や特長に色々な部分で違いがあるんです。
今回のコラムでは、その「違い」や2回目以降の大規模修繕における注意点などについて詳しくご紹介していきますので、2回目以降の大規模修繕を控えているオーナー様はぜひ今後の参考にしていただき、失敗しない大規模修繕の実施へとつなげていただけたらと思います。
「大規模修繕」と聞くと、1度目の大規模修繕なども参考に、屋根や外壁の塗り直しや屋上の防水工事といった工事のイメージが強いと思いますが、1回目の大規模修繕と2回目の大規模修繕の内容が同じ、というわけではありません。
今までのコラムでもご紹介しているように、1回目の大規模修繕は築後約12年が目安と言われています。そして2回目以降はというと、それから更に15年程経ったタイミングが大体の目安としている事が多いと思います。
とすると、2回目の大規模修繕のタイミングは築後約30年弱の状態で、1回目の大規模修繕の時よりも建物全体の劣化が進み、傷みや機能低下が起こっている箇所が多いことが想像できるでしょう。
そのため2回目以降の大規模修繕では、1回目と比べて修繕が必要な箇所が増えている状態ですので、1回目の大規模修繕では対応しなくても問題がなかった箇所についてもしっかりと修繕の手を加えなければならないことが多いのです。
国土交通省等から展開されている「マンション大規模修繕工事に関する実態調査(令和3年度)」において、総工事金額に対する工事内容が示された資料を見ると、建具・金物などの割合が増え、『工事回数が多くなると、建築系工事、設備系の割合が高くなる』といった記述もされています。
参考:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001619430.pdf
また一般的に、1回目に比べて修繕必要箇所が増えることにより、工事費についても2回目以降の方が費用が高くなる傾向にあります。
2回目以降の大規模修繕では、1回目よりも建物の経年劣化が進んでいるため工事範囲が広くなる傾向にあります。
では一体どのような工事内容が一般的なのか、こちらの目次で2回目以降の大規模修繕の主な内容をご紹介していきます。
■金物類の交換
「金物類」とはどのようなものを指しているのかよく分からない方もいらっしゃると思いますが、マンションにおける「金物類」には以下のようなものがあります。
<共用部>
・建物エントランスのドア(自動ドア含む)
・集合郵便受け
・宅配ロッカー
・屋外階段(鉄骨製)
・掲示板
・手すり
・共用部の表示板
など
<専有部>
・玄関扉
・表札枠
・窓サッシ
・バルコニーの手すり
・メーターボックスの扉
など
実際にはもっと色々な部分が該当しますが、ざっと挙げただけでもこれだけの箇所があります。
金物は経年劣化が早く建物の古さが目立ってしまう箇所でもありますので適切に修繕・改修の対応を行いましょう。
■貯水槽や消防設備のメンテナンス
貯水槽や火災報知器といった設備も築後20年ほど経っている場合は取替えが必要かどうかしっかりと点検を行う必要があります。
貯水槽の劣化は安定した水の共有に支障が出るだけでなく、部材の劣化によって漏水被害が出るなど注意が必要です。
消防設備の不備も、万が一火災が起こった場合、大きな被害につながりかねません。
そのようなリスクを避けるため、しっかりと点検・メンテナンスを行う必要がありますので、2回目以降の大規模修繕時には注意して対応要否を判断しましょう。
以上のように、2回目以降に必要となるケースが多い修繕としては「金物類」「消防、貯水関係の設備」が挙げられます。
この他にもエレベーターがある建物はエレベーターのリニューアルや、共用スペースがある場合はそこに置かれている設備など、検討すべき部分があります。
2回目以降の大規模修繕では、築後年数が経過していることから、建物の機能性と、「見た目」にもこだわって不動産価値を維持するための改修が大切です。
その際には以下のようなポイントに注意して進行しましょう。
■設備を一新する
建物内の設備を一新し、入居者に魅力を感じてもらうことが大切です。
建物の築後年数の経過とともに、入居者の年齢層やライフスタイルも変化します。
そのためには、入居者のニーズをくみ取った設備更新を行うといった修繕を通して、退去率の低下を防ぐこともできます。
■今本当に必要な工事を見極める
2回目以降の大規模修繕では、工事の内容と必要度を見極めないと、今後の修繕予算計画に大きく影響が出てしまいます。
次の修繕の費用が捻出できないといった事態にならないよう、建物の現状と工事の必要性をしっかりと把握し、適切な内容に対して工事を行うようにしてください。
ただ、利用者の安全に関わることや、入居者の多くが求めているようなニーズが高い工事を安易に除外してしまうと、破損や故障によるケガといったリスクや入居満足度の低下につながってしまいますので、修繕の予算計画に沿ってバランスをみながら工事内容を決めていきましょう。
■診断に基づく適切なタイミングでの修繕実施
適切な修繕時期から遅れてしまうと、その間に建物の劣化や設備の不調が進み、いざ改修を行おうと思った時には多額の費用が掛かってしまう、ということも考えられます。
状態がひどくなる前の適切なタイミングで対処することが、余分な費用を掛けず建物の状態を維持することにつながります。
定期的な建物診断を行い、タイミングを逃さないように注意しましょう。
2回目以降の大規模修繕については参考になりましたでしょうか。
今回ご紹介した内容をもとに、ぜひしっかりと「長期視点」での大規模修繕計画を立てることをお勧めします。
当社では、今までの経験をもとに、皆さまの建物の課題をしっかりと捉えた最良の修繕計画をご提案いたします。ぜひお気軽にご相談ください。