マンションは頑丈に造られていても、経年とともにさまざまな外部要因によって変化が生じます。特に雨風や日射は建物に影響を与え、そのため適切な時期に修繕が必要です。大規模修繕工事は、足場を掛けて行う大掛かりな工事で、建物の安全性や資産価値の維持に欠かせません。工事内容は多岐にわたり、実施タイミングによって修繕箇所も異なります。
この記事では、大規模修繕工事の基本的な概要や費用の目安に焦点を当て、適切なタイミングで適切な修繕を行うためのポイントを解説します。
マンションは耐久性があるとはいえ、時間の経過や気象条件、外部の要因により経年劣化が不可避です。外壁や屋根の劣化、給排水設備の老朽化などが進行すると、建物の安全性が損なわれ、資産価値も減少します。したがって、定期的な大規模修繕工事が必要です。
これには、建物全体の安定性や構造の強化が含まれます。例えば、外壁のクラックや屋根の漏水が放置されると、内部への浸水や劣化が進み、住民の安全を脅かします。また、建物全体の外観も崩れ、周囲の環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
大規模修繕工事は、これらの問題を未然に防ぐために欠かせないものであり、住民の快適な生活環境を保つために重要です。建物の長寿命化や住民の安全確保に貢献するとともに、将来のメンテナンス費用や資産価値の維持にもつながります。
「修繕」と「改修」は建物の維持や改善を目的とする工事ですが、微妙な違いがあります。
修繕とは
「修繕」は基本的に「建築当時の水準まで機能・性能を回復させる」ことを重点とした工事です。具体的には、傷んでいる箇所や発生した不具合に対して修理や部材の交換を行い、元の性能に回復させることが目的です。日々の使用によって生じる小規模な問題を修復する小規模修繕と、定期的に実施される建物全体の維持管理を目的とした大規模修繕工事があります。大規模修繕工事は、十数年に一度の周期で、全体の耐久性を維持するために実施されます。
改修とは
一方で、「改修」は主に「新しい機能や仕様を導入し、既存の性能を向上させる」ことを意味します。建物が時代とともに変わるニーズに合わせてアップデートする工事であり、快適性や効率性を向上させることが重要です。例えば、設備の更新やレイアウトの変更、エネルギー効率の向上などが改修の一環として挙げられます。
大規模修繕工事にはさまざまな工事が含まれます。外壁の補修では、ひび割れや塗膜の剥離を修復し、建物外部の美観を保ちます。屋根の補修では、劣化や浸水の防止を図り、内部の損傷を予防します。給排水設備の更新は老朽化に伴うトラブルを防ぎ、快適な生活をサポートします。
〈防水工事〉
屋上やベランダの既存防水層のやりかえ、もしくはトップコートの塗り替え
屋上パラペットや排水ドレンなど付帯部分の修繕や改修
〈外壁補修工事〉
既存塗装部の塗り替え
クラックの是正やモルタル剥離箇所への樹脂剤注入など
タイルの浮き部分のやりかえや部分的な貼り替えなど
既存目地の打ち替え、もしくは増し打ち
大規模修繕工事の一般的な流れは以下の通りです。
1.調査と検討
・専門の建築士やエンジニアが建物を詳細に調査
・不具合や劣化の程度を確認し、修繕の必要性を検討
2.計画の立案
・調査結果に基づき、修繕計画を立案
・修繕すべき箇所や必要な工事内容を決定
3.予算の策定
・修繕計画に基づいて予算を算出
・修繕に必要な経費を確保
4.入札と契約
・工事業者に対して入札を行い、最適な業者を選定
・契約を締結し、工事の詳細なスケジュールを確定
5.工事の実施
・足場の組み立て
・各種工事の実施(外壁補修、屋根補修、設備の更新など)
・安全確保と工程管理
6.検査と確認
・工事が完了したら、施主や関係者による検査を行う
・工事が計画通りに行われたかを確認
7.引き渡しと報告
・修繕工事が完了したら、引き渡し
・住民や関係者に工事内容や今後のメンテナンスについて報告
8.アフターフォロー
・完工後も定期的な点検やフォローアップを実施
・問題が生じた場合は、速やかに対応
大規模修繕の平均的な費用は、国土交通省が2021年に実施した「マンション大規模修繕工事の実態に関する調査」によると、1戸あたり約75万円~125万円が平均です。
マンションの平均戸数は?
マンションの平均戸数は34です。
34戸数×75万円=修繕費はおよそ2,550万円になります。
できるだけ安く抑える方法
相場は把握できても、大規模修繕の費用は決して安い金額ではありませんので、できるだけ安く抑えたいですよね。
1.複数業者から相見積もりを取る
必ず相見積もりを取りましょう。その際、「◯◯工事 一式」というような一式で記載されているような見積もりを提出している業者は要注意です。
2.コンサルタント会社主導の「談合」に要注意
施工会社に一括して管理を任せてしまうと、コンサルタント会社と談合して意図的に工事価格を吊り上げられてしまうかもしれません。
3.施工方法を見直してもらう(無足場工法)
「足場の設置」は大規模修繕の費用の約2割を占めます。足場を設置しない「無足場工法(ロープやゴンドラをする方法)」を採用できるかどうか、施工会社に相談すると良いでしょう。
注意点は?
大規模修繕は、マンションの居住者にとって安全性や利便性を高める工事です。しかし、景観が損なわれたり不便を感じたりすることもあります。円滑に大規模修繕を進めるためには、以下の注意点を意識しましょう。
1.セキュリティー対策の徹底を住民に依頼する
大規模修繕の期間は、外部からの侵入者を防ぐために、工事業者と住民が共にセキュリティー意識を高める必要があります。また、住民や子どもが誤って工事現場に入り込むリスクも軽減できるでしょう。
2.騒音の周知徹底をする
工事中は金属音やドリルで穴を空ける音などが生じます。住民の協力がなければ工事が円滑に進められませんので、管理組合からも事前周知を行いましょう。
マンションの機能性を維持するために必要な工事であると理解していても、工期延長は住民にとって不安やストレスの原因となります。悪天候など理解が得られる理由以外での工期遅延は避けましょう。
大規模修繕工事はマンションの寿命を延ばし、住民の安全と資産価値を守る重要な手続きです。外壁・屋根の補修から給排水設備の更新まで多岐にわたり、建物全体を適切な状態に維持します。それには、業者選定や住民とのコミュニケーションが不可欠です。大規模修繕に関して不安な点や気になることがありましたら、ぜひお気軽に椎名創建にお問い合わせください!