新築当時は何もトラブルも不具合も皆無だったはずのマンション。
しかし「経年劣化」は避けられません。
マンションにより長く快適にお住まいになるためには、定期的な修繕や改修が不可欠です。
特に、大規模修繕はマンションの資産価値を維持する上でも大変重要です。
一般的に大規模修繕の周期は12年が目安ですが、近年では15年、18年周期に見直しする管理会社も増えています。
今回は、大規模修繕の適切な周期と修繕内容と必要性について解説します。
大規模修繕とは、経年劣化した建物や設備を定期的に修繕することです。
普段実施するのが難しい建物本体(躯体)の修繕や共用部分の改修を行います。
修繕と改修の違い
(修繕)
建築当時の水準まで機能や性能を回復させること。
(改修)
機能や維持や回復に留まらず建物全体の機能や性能を進化させること。
年月が経つと暮らし方や生活環境が変化し、マンションの設備や性能も進化しています。
そのため、現在の水準に合わせて建物を進化させるのが改修です。
改修することにより、暮らしやすくなるだけでなく資産価値の向上につながります。
大規模修繕工事の内容
足場や現場事務所など工事の品質を確保するための仮設設備を設置します。
足場の周囲にはメッシュシートを覆い、工事中資材の落下や塗料の飛散を防ぎます。
壁などのコンクリート躯体部分のヒビ割れなどを補修するため、下地補強をします。
下地補強の状態がよくないと、ヒビの再発をする可能性があります。
建物の耐久性にかかわる重要な工程です。
経年劣化により、タイルのヒビ割れや浮きが生じる場合があります。
放置すると、ヒビから雨水が浸入しコンクリートを痛めて躯体に影響します。
タイル補修工事は、作業員が足場を使いタイル全面の状況を確認し補修します。
外壁のつなぎ目などに使用されるゴム状のシーリング材は、経年により硬化しヒビ割れする可能性があります。
そのため雨水や埃などの侵入を防ぐためシーリング材を打ちかえる工事を行います。
シーリング工事は、雨水などの侵入を防ぐだけでなく建物の気密性が高まるので断熱効果も期待できます。
塗装は美観を保つだけでなく、雨水や汚れから建物を守る役割があります。
外壁塗装をせず、放置すると劣化が進み下地の接着力が落ち、塗装が剥がれその部分から雨水などが浸入してコンクリートを痛める原因になります。
扉や外部階段などに使用されている鉄は経年によりサビが発生します。
サビは見た目の悪化だけでなく、耐久性にも影響します。
サビを落とし、塗装をして保護することで見た目も耐久性も改善できます。
耐久性のあるコンクリートですが、経年によるヒビなどから内部に水が浸入すると劣化します。そのため雨水や汚れからコンクリートを守るための工事が防水工事です。
防水層に、破れ、しわ、ふくれなどがある場合は早急に補修しましょう。
大規模修繕工事の周期や回数について明確なルールはありません。
建物の状況に応じて、管理組合が主導となり実施を決めます。
しかし、一般的に大規模修繕工事の周期は12年と言われています。
大規模修繕工事の周期が12年の理由
国土交通書が平成20年に策定した「長期修繕計画作成ガイドライン」に、マンションの修繕とは現状レベルを新築当初のレベルまで回復させること、1回目の大規模修繕は新築から12年程度で行うことが記されているため、大規模修繕工事は12年周期と一般化されているのです。
しかし、令和3年にガイドラインが見直され、12年目~15年目で行うと変更されています。
建築基準法により、定期報告制度の調査や検査基準が厳格化され、築10年以上で外壁がタイル貼りのマンションは3年以内に外壁の「全面打診調査」の実施が義務付けられました。
外壁タイルの専用接着剤は、経年により接着剤が劣化するとタイルの「浮き」が生じ、タイルが剥がれる可能性が生じます。外壁タイルが剥がれ落下すると大事故につながります。
そのため、事故防止のために全面打診調査が義務づけられました。
全面打診調査には足場が必要なため、大規模修繕工事と同時に実施をし、費用を抑えるという考え方が多い理由です。
12年周期の理由のひとつに、塗料や防水材など資材の劣化のタイミングがあります。
建物の塗料や防水材、シーリング材、タイルなどは10年を超えると劣化が生じるため、建物を十分に保護することができない状態になります。
そのため12年周期が一般化されているのです。
マンション大規模修繕工事はすべて12年周期で行っている訳ではありません。
建設資材や工法も進化し、15年、18年周期で大規模修繕工事計画をしているマンションもあります。
15年、18年周期の1番のメリットは工事回数が減るのでコストが抑えられることです。
60年間で考えると、大規模修繕工事の回数は12年周期で5回、15年周期は4回、18年周期は3回程度となります。
しかし、15年や18年周期の場合、次回の修繕工事までの時間が長いため局所的に劣化が激しく進み、逆に修繕箇所が増えてしまう可能性もあります。
そのため、修繕工事の期間を延ばすにはしっかり建物診断を受け、建物の状況確認が必要です。
建物は環境や条件により劣化状態は異なるので、適切な時期に修繕工事を行いましょう。
建物の資材は経年により劣化します。
日々の生活では気が付かなくても、修繕工事を行わなかったために外壁タイルの剥落など重大な事故につながります。
劣化の放置は危険を招くので、安全な生活を守るためにも大規模修繕が必要なのです。
直射日光や雨風に常に晒される建物は、安全面だけでなく美観も経年劣化します。
劣化が進んだマンションは、新規入居者の獲得が困難となり、その結果資産価値が低下します。
資産価値を維持するためにも、大規模修繕工事を行い対処する必要があります。
住宅の設備や性能は日々変化しています。
築数十年経過したマンションは、いささか時代に合わない箇所があるかもしれません。
近年は、良好なネット環境、宅配ボックス、バリアフリー化などが求められるので、常に時代に合わせて水準を合わせていく必要があります。
大規模修繕工事で改修を行うことは、安心・安全で暮らしやすくなるだけでなく資産価値を守ることになるのです。
マンションの大規模修繕工事は、建物や設備の劣化を補修し、住民の安心・安全な暮らしと建物の資産価値を守るために不可欠な工事です。
マンションを購入したら、大切な住まいのために大規模修繕工事に対して当事者意識を持つことが大切です。